文人にも愛された穏やかな街並みが残る街、市川に暮らす
市川市は、千葉県の北西部に位置する人口約49万人の市だ。市川という地名は、市の西側を流れる江戸川が当時東国一の川であったことから一の川が訛ったとする説や、江戸川の河岸に川舟が集まり定期的に市が開かれていたことに由来するという、ふたつの説がある。
市川の住宅地としての歴史
現在の市川市は古くから人々が暮らしていた場所で、「堀之内貝塚」「姥山貝塚」「曽谷貝塚」など多くの貝塚が残されている。また、縄文時代の遺跡は市内に約60ヵ所以上、弥生時代の遺跡も数ヵ所見られ、人々の営みが長く続けられていたことがうかがえる。律令時代には「下総国国府」が置かれるなど、千葉県北部一帯の中心地として機能していた。その国府があった場所にちなんで名づけられた地名が国府台(こうのだい)だ。万葉集には「国府台」駅近くの真間に住む絶世の美女がいたと詠まれるなど、当時の市川市は都にも広く知られる存在だった。
1894(明治27)年、総武鉄道(現・JR総武線)の「市川」駅が開業し、1914(大正3)年、京成電気軌道(現・京成本線)の「江戸川」駅から「市川新田(現・市川真間)」駅間が開通すると、交通の利便性が増した市川市は別荘地として人気を博すようになる。
とくに「市川真間」駅周辺では、東京都心に暮らす政財界など富裕層の別荘が建てられ、黒松が植えられた情緒漂う街並みは今も高級住宅地として知られている。
こうした落ち着いた別荘地は、多くの文人にも愛された。永井荷風や幸田露伴、北原白秋なども市川に居を構えた文人で、現在は、彼らの足跡が「いちかわ文学の散歩道」として整備されている。とくに真間川沿いには桜並木もあり、春にはお花見をしながらの文学散歩も楽しめる。
市川市でも、かつての別荘地の面影を残す街並みを生かす街づくりを推進している。1938(昭和13)年には風致地区の指定を受けたほか、エリアの大部分が都市計画法上の第一種低層住居専用地域に指定されているため、今後も美しい街並みは維持されることだろう。
市川市のアクセス情報
市川市内には「市川」駅や「本八幡」駅、「国府台」駅、南部の「行徳」駅など16の駅がある。なかでも「本八幡」駅はJR総武線と都営地下鉄新宿線が乗り入れ、乗り換え駅としても機能している。「東京」駅からJR総武線快速に乗り、「市川」駅で各駅停車に乗り換え「本八幡」駅までは約22分(乗り換え時間含まず)、「新宿」駅からは都営地下鉄新宿線の急行利用で直通約29分となる。京成本線「市川真間」駅には、「日本橋」駅から都営地下鉄浅草線、京成押上線直通電車で「京成高砂」駅へ、京成本線に乗り換え約30分(乗り換え時間含まず)でアクセスできる。
ニッケコルトンプラザなど、便利な商業施設が点在
ショッピング環境を見ると、各駅前を中心に、小〜中規模のスーパーマーケットが点在しているほか、市川・本八幡エリアは駅直結の「シャポー」や「パティオ本八幡」、再開発で誕生した「I-linkタウンいちかわ」など大型商業施設も豊富で買い物で不便を感じることはまずない。
また、中山参道商店街といった、地元の商店街も健在で、変わらず地元住民の生活を支えている。
「本八幡」駅と「下総中山」駅の間にある「ニッケコルトンプラザ」は、ファッション、雑貨はもちろん、飲食、シネマ(映画館)、習い事やスポーツ施設まで160店鋪以上が入居する大規模ショッピングモールで、市外からも多くの人が訪れる人気スポットになっている。
文教地区もあり、子育てファミリーに暮らしやすい街
京成本線の北側には、「国府台女子学院」「日出学園」「市川中学校・高等学校」「昭和学院」といった私立の教育施設が昭和初期に続々と誕生し、千葉県有数の文教エリアとして発展した。
特に「国府台」駅の北側には、「和洋女子大学」や「千葉商科大学」、「東京医科歯科大学 国府台キャンパス」が点在しており、通学時間帯には「国府台」駅や「市川」駅から多くの学生がキャンパスに向かう活気あふれる光景が繰り広げられている。
幼稚園、保育園から大学まで、周辺エリアに多様な選択肢があること、エリア内の住宅地は落ち着いた雰囲気に包まれていることから、東京近郊でも子育てにふさわしい環境があるといえそうだ。
また、市川市では子育て支援に力を入れていることでも知られている。保健師や助産師が訪れる「新生児・1~2か月児訪問」、保健推進員が訪れる「3か月児訪問」など、生後3ヵ月までの乳児がいる家庭には訪問事業を実施。生後4ヵ月の乳児とその保護者に向けて「4か月あかちゃん講座」も開講している。
市川市では子どもの遊び場、親同士の交流の場も豊富だ。市川市内には「地域子育て支援センター」を11ヵ所設置されているほか、市川市内各所で「すこやかひろば」が開かれており、市川市内で14ヵ所あるこども館でも「あつまれ赤ちゃん」を開催している。さらに、子育てサークルを立ち上げたいママをサポートしてする取り組みも行うなどきめ細やかなサポートが行われている。
江戸川・真間川など四季を感じる身近な自然環境
市内中部を流れる真間川沿いは桜の名所としても知られ、折に触れて散策するのもこの地での暮らしを豊かにしてくれるだろう。江戸川沿いでは開放的な風景を眺めながらの散策、ジョギング、サイクリング、夏にはBBQも楽しめる。
市内北部の「市川市動植物園」や国府台エリアの「里見公園」といった中〜大規模公園もあるほか、市南部にも、「行徳駅前公園」といった公園・スポーツ施設が点在しているため、散歩やジョギングなどを楽しむことができる。
文人にも愛された穏やかな街並みが残る街、市川に暮らす
所在地:千葉県市川市